【書評】貴志祐介『新世界より』講談社文庫を読んでみた。
本の評価
貴志祐介『新世界より』講談社文庫 ¥790(税別)
評価:B
どんな人に向いている小説なのか
魔法が使える人間や、ドラクエのようなモンスターが好きな方には抵抗なく読めます。
洋書でいうと、ハリーポッターが好きな方だと、より良いです。
どのような本かをぶっちゃける
今から2000年前のまだ日本人が呪術を使える頃を舞台にした物語です。
しかし、ハリーポッターのような、魔法を修行して仲間と一緒に大冒険して最後にウォルデモートを倒すぞエイエイオー!というような内容ではありません。
雰囲気としては、ファンタジー系ではなく、ホラー系です。
出てくるキャラクターも、バケネズミや芋虫が変異したものといった奇怪なものが多く、作中ではその描写が非常に細かく書かれており、読んでいくと吐き気がします。
そんな世界で、呪術という万能な力を持った人間がどのような殺戮や暴走をするのか、それを止めるためにどのような教育や洗脳が行われる必要があるのか等々を非常にリアリティに書かれています。
裏切りや不条理といったものが多く「いったいこの話はどこに向かっていんだ」とオチを先に見たくなるような作品です。
見どころ
実際の人間が呪術という神のような力を持つと非常に厄介になるということがわかる
現代の僕たちが呪術が使える世界はこうなると非常にリアリティが高く書かれています。
そのため、お決まりのように戦争や殺戮がおきますし、それはやっぱりどんなにハートフルな教育を受けたとしても無駄なんだなと改めて感じることができます。
作中で、呪術を使える人間を核爆弾として例えているところがよりリアル。
貴志祐介は、もともと邪悪な描写が非常にうまい。
この作者は、クリムゾンの迷宮や悪の経典といったホラー系を書くことが上手いことで知られています。悪の経典はマンガや映画にもなりました。
しかし今回は長編なため、上中下の「中」に関しては、オチへのフリのためか、間延びします。
そのため、読んでいくことがどんどんだるくなり、オチまでの長さに驚愕します。
この本を最後まで読むためには、「この人はホラーの天才なんだ」と自分に言い聞かせて読み進めることをおすすめします。
まとめ
僕はもともとファンタジーが非常に好きなため、前半のハートフルなノリにもあまり違和感なく読み進めることができました。
悪の経典を読んでから、この本を読むと、貴志祐介の作品の振り幅に驚くと思います。
ただ、作中の中に「邪悪」という言葉を入れるのは、さすがだなと思いました。
なぜなら、この言葉一発で作品がガラッと嵐のように展開するからです。
それでは、さようなら。